一人薬剤師の調剤薬局で働くことは不安だなぁと思っている薬剤師必見!この記事ではその不安を乗り越えるための方法を示します。実は10年前の私もチョーびびりながら一人薬剤師デビューしたんです。この記事を読めば、一人薬剤師に挑戦してみたくなるかも!!
監査してくれる人がいないと…
困ったときにすぐ聞ける相手(薬剤師)がいないと…
休みが自由に取れない
この業界から取り残されそう
となりの医師とうまくやれるかなぁ
一人薬剤師への不安って、こんな感じですかね?
では、さっそくこれらの不安に対して乗り越えるため方法を示していきましょう。
「監査する人がいない」不安に対する克服方法
- 事務員と薬剤師のダブルチェックを行う機会を多くしよう
- 自分の調剤・監査方法のルーチン化を図ろう
- 監査システムの導入を検討してもらおう
- 在庫管理システムの導入を検討してもらおう
事務員と薬剤師のダブルチェックを行う機会を多くしよう
事務員さんに薬を取り揃えてもらい、薬剤師が監査する
いわゆる事務員と薬剤師のダブルチェックを行う機会を多くしましょう。
事務員さんの薬の取り揃えは0402通知の範囲内で行うことが大切です。
事務員さんが複数いる場合、トリプルチェックもアリ。
私の経験上ではありますが、処方せん1枚に対し複数の事務員が薬を取り揃える場合、薬がダブって出されていたり、逆に出されていない薬があったなど、監査で引っかかるケースが多かったです。
ですから、複数事務員さんがいる時は処方せん1枚に対し一人の事務員さんに薬の取り揃えを担当させていました。
ハインリッヒの法則ってご存じですか?
監査で30回ミスが見つかれば、1回は患者さんに迷惑がかかってしまう恐れがあるということです。
一つのミスでも、しっかり原因を把握し改善しましょう!!
自分の調剤・監査方法のルーチン化を図ろう
調剤の仕方と監査の仕方をいつも同じ方法でやることです。
たとえば、私の場合では
- 処方せんの入力は必ず処方せんのレシピ順にする
- 処方せんの監査(お薬手帳、薬歴のチェックを含む)
- 薬の取り揃えを行った後、薬を処方せんのレシピ順にトレイに左から右へ並べる
- 計量した粉薬の容器、シロップのボトルは元あった棚には戻さず、テーブルに置いたままにする
- 混合等で使用した軟膏のチューブも片付けず、テーブルに置いたままにする
- すべて薬が出揃うまで、監査(処方せんのレシピ通りに薬が用意されているかの確認)をしない
- 監査時にテーブルに置かれた粉薬の容器やシロップのボトルを確認し、元あった棚の場所に戻す
- 監査時に混合で使われたチューブを確認し、ゴミ箱へ。薬の残りがあれば所定の場所に保管する
- 監査時に薬を薬袋に入れない
- 投薬時に情報提供文書の薬の写真と手に持った薬を見比べ、確認しながら薬袋に入れる
- あらかじめ薬袋に入れて渡さなければならない場合、投薬カウンターに薬を持っていき処方せんのレシピ通りに薬を入れる
実は細かいことをいうとまだまだあります(笑)
これらのルーティーンは
一日平均処方せん受付30枚ほどの耳鼻科の処方せん受付がメイン(75%ほど)の薬局で働きながら作り上げられたもの。
たとえお待ちいただいている患者さんが多くてもこのルーティンは崩しません。
ルーティーンが変わるのは、なにかミスが起こって改善する必要に迫られたときのみ。
「そんなことやってたら待たせすぎて患者さんが離れるわ」と思っている読者の方
全くそのとおりだと思います。
ルーティーンを作り上げていくときに、無駄なものはないか常に考える必要はありますね。
少し待たせてもイライラさせない薬局づくりも検討してみるとよいと思います。
待ち時間が少しあった方が薬局に置いてある商品の売り上げが伸びますので(^^)
それでも待たせることが不安な方
「早く薬を出すこと」、「間違えないで薬を出すこと」、どちらが優先されるのでしょうか?
間違えないで薬を出すために「必要なこと」と思うようにしましょう。
自分の調剤・監査のルーティーンが徹底されると、「自分は間違えない」と自信がつきます。
監査システムの導入を検討してもらおう
ここからはお金がかかる話になります。これまで書いてきたことを行った上で必要なら検討するべきです。
監査システムは、錠剤を画像で認識しチェックするもの、バーコードで薬の取り違えがないかチェックするものなどいろいろあります。
ただし稼働するまでの準備に相当の時間と労力がかかるのはもちろん、稼働後の日々のメンテナンスなど、新しい仕事が増えます。
在庫管理システムの導入を検討してもらおう
こちらもシステムを導入するのでお金がかかります。これまで書いてきたことを行った上で必要なら検討すべきです。
在庫管理システムは薬の取り違えがあったかどうかを後で確認するのに有用です。
薬ごとの在庫数をシステムで管理します。一般的にシステムの在庫数と実際の薬の在庫数が合っているかの確認作業が定期的に必要となります。
システム上の在庫数と実際の在庫数が合わない場合、その薬にまつわるミスがあるということになります。
通常、前回チェックした薬が今回のチェックまでに「処方がない・入庫がない」場合は、その薬は今回の実在庫を数える必要はありません。
ただし実在庫数が合わず、さまざまな条件から違う薬を渡してしまった可能性があるとき、可能性のある薬すべての実在庫数を確認しなくてはなりません。
「困ったときにすぐ聞ける薬剤師がそばにいないと」不安に対する克服方法
- 「すぐ」ではない形にしよう
- ネットをうまく使おう
- 自分で解決したことを積み重ねていこう
「すぐ」ではない形にしよう
いままでにあった「困ったときにすぐ聞ける薬剤師がいて助かった」ことを振り返ってみてください。
「すぐ」聞けなかったらどうなっていたでしょうか?
「すぐ」じゃなかったらいけなかったのでしょうか?
「すぐ」ではない形には出来なかったのでしょうか?
「薬剤師に聞く」以外に他の方法で解決できなかったのでしょうか?
そう考えると「すぐに解決しないといけない困ったこと」というのはかなり少なくなるはずです。
困ったときに頼った薬剤師が、もし間違ったことを言ってたらどうでしょう?
同僚の薬剤師は神ではありません。
結局最後は自分自身で判断し答えを見つけ出すしかないですよね。
困った状況に対して、一人薬剤師は「すぐに対応する」ことが困難になることが多いと思います。
ですから、まずは「すぐ」ではない形にする。
具体的には患者さんに対して、「後で電話する」、「後で届ける」、「残薬があれば郵送する」、などなどの対応をします。
そのあと、もし必要があればお目当ての薬剤師に連絡を取るよいでしょう。
頼った薬剤師からもらった情報はきちんと批判的吟味をし、最終的には自分自身が判断します。
頼る同僚がそばにいないから、自己研鑽できるとも思っています。
ネットをうまく使おう
ネットがないと仕事ができないというくらい、私も普段からよく使います。
普段からよく使うサイトをブラウザにお気に入り登録やブックマークしておくなどしてください。
自分で解決したことを積み重ねていこう
自分で解決するということは、
①自分で必要な情報を収集し
②自分で情報を吟味し
③自分で決断し
結果的に問題を解決することです。
この経験を積み重ねていくと、困ったことが起こりそうだと感知する能力も向上していきます。
困ったことが起こらないように対処することにより、結果的に困ったことが少なくなります。
こんな例ではどうでしょうか?
薬の流通が不安定で、今まで使っていた薬が勤め先の薬局で入手できないとします。
その薬は隣のメインの病院でよく使うので、このままだと当薬局で薬が渡せなくなります。
こういったケースではどういう行動をして困ったことが起こらないようにしますか?
隣の病院に、「薬の在庫がなくなりました」と急に言えば大変かも
医師に代替薬について聞かれるかも
代替薬は定期的に手に入るのだろうか
他にも思い浮かぶ方もいらっしゃると思いますが、これらを解決するために、今度は行動の順番と解決方法を考えてみます。
- 該当する代替薬について自分で調べてみる(用法、用量、相互作用等)。
- 該当する代替薬が入手できるかどうか卸に確認する(定期入手できるかどうか等)。
- 上記2つの情報を踏まえて伝えるべき情報をまとめ、医師と面会する。
このように困ったことが起きないような行動も積み上げていってください。
「休みが自由に取れない」不安に対する克服方法
- 節度ある休み方にしよう
節度ある休み方にしよう
休みを自由に取れない、の「自由」ってどの範囲なんでしょう。
休みたい理由としていろいろありますけど、以下だったらどう思いますか?
- 今日なんかかったるいから休もう
- 今日熱が38℃もあり体も痛いから休もう
- 2か月後に息子の卒業式があるから休みたい
- 1年後家族旅行に行くから4日間休みたい
- 今日なんかかったるいから休もう
-
これはダメです。一人薬剤師の調剤薬局では働けません。
一人薬剤師の場合、薬剤師が休むと薬局で調剤が出来なかったり特定の医薬品を販売することが出来なかったりするため、処方せんを持ってきていただいた患者さんや特定の医薬品の購入のために来局した方に対して、他薬局を紹介するなどの対応をしなければなりません。
また、いつも利用している方が他の薬局に行った場合、薬の入手が困難等の理由で調剤を断られるケースがあったり、処方元の医師に薬の変更を求めたりと、患者さんだけでなく他の薬局や病院に対しても迷惑をかける形になることを忘れてはなりません。
- 今日熱が38℃もあり体も痛いから休もう
-
これは仕方がないでしょう。
ただし上記のように他の薬局や病院に対して迷惑をかける形になるため、少なくともメインの医療機関に対しては連絡し、様々な対応をお願いすべきでしょう。感染症拡大のリスクも考慮し、病院を受診し明日以降の出社について早めに判断することも必要です。
- 2か月後に息子の卒業式があるから休みたい
-
これは休めるでしょう。
代わりに働いてくれる薬剤師の手配を開設者等にお願いします。
- 1年後家族旅行に行くから4日間休みたい
-
これも休めるでしょう。
代わりに働いてくれる薬剤師の手配を開設者等にお願いします。
休みに関しては、やはり自由に取りづらい環境であることは間違いありません。
頻繁に休みが想定される状態では、一人薬剤師の薬局で働くことは厳しいです。
「この業界から取り残されそう」不安に対する克服方法
- eラーニングを活用しよう
- 定期的に書籍・ネットから情報を得よう
eラーニングを活用しよう
一人薬剤師は仕事が終わらず(または休めず)「業界の流れについていくための研修が受けられない」ということが昔はよくよくありました。
今はWebで参加できる講義も増え、全国各地どこにいても同じ研修が受けられる世の中になりましたよね。
しかも、患者さんに渡す「かかりつけ薬剤師の情報」の厚生労働省が作ったテンプレートにおいて「認定薬剤師・専門薬剤師資格」「終了した研修」「論文・学会発表の実績」「所属学会・団体・その他」の記入欄があり、頑張っている分だけ患者さんにアピールできます。
資格がすべてではないですけど、真面目なやつだと伝わるかと(^^)
私は業務中に暇であれば、eラーニングしてます。
一人薬剤師だと、こういう点では周りに気を使いません。
対人業務に必要なスキルを身に付けるためなので、立派なお仕事です!
\eラーニングで資格を取りました(^^)詳しくはこちら/
定期的に書籍・ネットから情報を得よう
業界の流れに取り残されるのが心配であれば、日本薬剤師会から送られてくる月1回の雑誌に目を通すのがよいでしょう。
ネットからの情報は信頼できるものを吟味して、定期的に情報を得るのもよいですね。
「となりの医師とうまくやれるかなぁ」不安に対する克服方法
- 定期的に顔を出そう
- 気になる処方意図はどんどん聞いていこう
- となりの医師の必要な人になろう
定期的に顔を出そう
病院のスタッフに医師との面会のアポイントを取り、定期的に顔を出しましょう。
ただ顔を出すだけだと、「こいつ何しに来たんだ」と思われるので、まずは薬の使い方の確認などがよいですね。
そのうち、医師から○○について知りたいんだけど、とか要件を与えられたら大きな進歩です。
まずは薬剤師として、そのうち人として信頼されるようになりたいものです。
気になる処方意図はどんどん聞いていこう
となりの医師の処方が分かると、医師と同じ説明ができ、薬局の差別化にもつながります。
また、患者のフォローするべき点も処方意図が分かると見えてくることが多くなるので、医師への情報提供も多くなり、面会回数が増えていきます。
となりの医師の必要な人になろう
処方薬の重複のチェックや、相互作用による薬の変更の提案を繰り返すこと、患者のフォローアップなどの実績を積み重ね、薬剤師として存在感をアピールできるとよいでしょう。
それでもまだ関係性に不安であれば
薬剤師としてだけではなく、人として何か助けられることはないかを考えます。
となりの病院の草むしり、雪よせ、などなど
そのうち食事やお酒に誘われたら、そういう機会に色々聞いてみましょう。
正直、私は最初の数年間は仕事の9割が「となりの医師の必要な人間になること」だと思ってやってました。
最後に
ここまで読んでくださってありがとうございます。
最後に薬局の現状についてです。
- 薬局の淘汰が始まりつつある今日でも、薬局はまだまだ増え続けている(令和4年2月14日 第1回薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ 資料2/厚生労働省)。
- 現在の薬局は、店舗あたりの薬剤師数が1人または2人の小規模な薬局が多く、立地別に見ると、診療所や病院の近辺の薬局、いわゆる門前薬局の割合が多い(「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」の「とりまとめ」~薬剤師が地域で活躍するためのアクションプラン~/厚生労働省)。
まだまだ一人薬剤師のニーズはありそうですね(^^)。