これから心不全療養指導士を取得したいと思っている方、薬剤師で資格取得に興味のある方必見。この記事は弟3回心不全療養指導士認定試験に合格した一人薬剤師が合格までの経緯や勉強法についてまとめたものです。実は、症例報告では確認者・指導者(所属長・部門長・循環器科の医師など)の承認(押印等)が必要で、一人薬剤師にとって大きな壁が存在します。この記事を読めば、資格取得までの細かい流れが分かりいろいろ準備できますよ!
勉強してよかったこと
- 心不全について広い知識が得られたこと
- いつもと変わりない患者さんとの関係が深められること
- 多職種との協働がかかせない(在宅)医療の基本的な知識を得られたこと
心不全発症の予防のカギは、心不全の原因となる疾患の発症予防や疾病管理にあります。
この資格は、心不全を発症した患者さんだけを対象にしているわけではなく、心不全の発症を未然に防ぐための活動も期待されているため、心不全の原因となるさまざまな疾患についても学習することになります。
高血圧症や脂質異常症などの発症⇒虚血性心疾患等の発症⇒心不全の発症
これらの病態の進展は一方通行なんですよねー。
だから、病態の進展に対して早いうちから介入しなければなりません。
薬局で、「いつもと変わりないですねー」といって薬を渡していた高血圧症や脂質異常症の患者さんが該当します。
この資格の勉強を始めてから、
こういった患者さんには積極的に血圧や採血検査結果を聞いて、具体的なことを教えてくれない方に対しては、出来る限り心不全のことをお話しするようにしました。
そんな方の中には、血圧計を購入して毎日測定し始めたり、採血結果を毎回教えてくれるようになった方もいました。
非常にうれしいです。
話は変わりますが、心不全になると生活の制限が多くなります。また心不全の進行により、いままできちんと行っていた生活の制限がさらに増えることも起こりえます。心不全は身体機能が徐々に落ちていく進行性のものであるため、患者さんの精神的な苦痛は相当なものです。
こういった患者さんや家族の方に共感できる知識や指導についても学習します。
心不全の進行により身体機能が落ちていくと、ご自宅で過ごすためには様々な介護サービスの利用が必要になることや、
進行をゆっくりにするには、いかに服薬や日常生活を乱さないようにできるかがカギとなり、そういった意味で多職種協働が必要不可欠となります。
効率的かつ効果的な多職種協働を行うため、カンファレンスの重要性や具体的なカンファレンスの進め方についても学習します。
心不全療養指導士ってなに?
日本循環器学会が2021年度から認定制度を開始した新しい資格です。以下は心不全療養指導士ホームページの抜粋です。
超高齢社会を迎えて心不全患者が急増している現状を踏まえ、心不全の発症・重症化予防のための療養指導に従事する医療専門職に必要な基本的知識および技能など資質の向上を図ることを目的として、日本循環器学会が2021年度より「心不全療養指導士(CHFE:Certified Heart Failure Educator)」認定制度を開始しました。
病院に限らず在宅をはじめとした地域など様々な場面で幅広く活動し、心不全におけるチーム医療を展開していくことで、心不全による増悪・再入院予防、そして生活の質(QOL)の改善を図ることを目指して、多くの専門職が取得できる資格となっています。
資格取得を検討する前に確認しておきたいこと
認定試験申請の際の提出物に確認者・指導者の承認が必要
認定試験を受ける前に、症例報告で合格をもらわなくてはなりません。
その症例報告では症例ごとに確認者・指導者(所属長・部門長・循環器科の医師など)の承認(押印等)が必要で、こちらについての目途を立てておかなければなりません。
私は一人薬剤師でありますが、勤め先の会社は2店舗の薬局を経営しており、社長が薬剤師ということで、社長に押印をお願いしました。
費用
資格取得にまつわる費用
項目 | 費用 |
日本循環器学会への入会 | 2,000円(※) |
日本循環器学会年会費 | 8,000円(準会員)(※) |
心不全療養指導士認定試験ガイドブック改訂第2版 | 3,960円(※) |
eラーニングの受講 | 5,000円(※) |
受験審査料 | 15,000円(※) |
合計 | 33,960円 |
資格更新にまつわる費用(5年間で50単位以上/詳しくは心不全療養指導士ホームページ)
項目 | 費用 |
日本循環器学会年会費 | 8,000円/年(準会員) |
更新審査料 | 10,000円/5年 |
日本循環器学会学術集会への参加(5年間の中で1回以上の参加が条件)(Web可)/10単位 | 6,000円/回(※1) |
日本循環器学会コメディカルセミナー(Web可)/10単位 | 4,000円/回(※2) |
日本心不全学会教育セミナー(Web)/7単位(年1回まで) | 6,000円/回(※3) |
その他(心不全療法指導士ホームページでご確認ください) |
組み合わせは色々ありますが、更新のために4年間は最低12,000円(年会費&コメディカルセミナー)、残り1年は最低24,000円(年会費&更新審査料&学術集会)の費用がかかると私はシミュレーションしました(年平均14,400円)。
詳しくは心不全療法指導士ホームページをご参照ください。
心不全療養指導士を取ろうと思った理由
ある患者さんとの出会い
2021年4月に小規模多機能の施設長さんから、ある患者さんの居宅療養管理指導による訪問をお願いされました。
その処方内容を見た時に、いままで経験したことのない利尿剤の量にびっくりしました。
トルバプタン15mg/日、フロセミド100mg/日、トラセミド16mg/日、アゾセミド60mg/日
この利尿剤を使っていても体重が増えていく状態だというのです。
この患者さんとの出会いがきっかけで心不全について勉強しなければという思いになり、ネットでいろいろ書籍等を検索しているときに、たまたま心不全療養指導士の存在を知りました。
心不全療養指導士ホームページをみて、今後、薬局が在宅患者さんへの介入のニーズが増えると予想される中で、必要な知識であると改めて認識。
こういった経緯で心不全療養指導士を取ろうと思いました。
居住している都道府県で認定試験を受けられる
心不全療養指導士ホームページに、第3回については、居住している都道府県内で受験できる案内が出ておりました。一人薬剤師の私にとってまだまだ他県への移動は難しい現状があります。本当にありがたいと思いました。
Web講習で更新が可能
更新に必要な学会やセミナーの参加がすべてWebで可能です(2022.12.30現在 ホームページで確認)。
心不全療養指導士認定試験までの道のり
心不全療養指導士認定試験ガイドブック第2版購入(2022.2.24)
第2版は2022.3に発行されるとのことでしたので、2月24日にアマゾンで注文しました。
2022.3.18に第2版ガイドブックが届きました。
実は2021年12月の段階ですでに受験を決めており、第2版の発行を知らずに初版本を1月にメルカリでゲット。
第2版が家に届く前に、初版本はすでに一読しておりました。
初版本、最初はいらない買い物だったなぁと思いましたが、勉強を深めるために良い買い物でした。
詳しくは認定試験までの勉強法で後述します。
日本循環器学会への入会(2022.4.1)
心不全療養指導士を受験し認定を受けるには、日本循環器学会の入会が必須です。
4月から期の始まりとなるので、4月1日まで待って入会しました。
正会員と準会員が選択できますが、準会員でも問題ないとのことなので、準会員を選択しました。
入会にあたって、卒業校名、卒業学部の入力があり戸惑ってしまいましたが(笑)無事入力を完了。
クレジットカードで10,000円の支払いを済ませました。
会員ポータルサイトへの本登録が完了(2022.4.4)
日本循環器学会から入会申請時に登録したメールに「会員ポータルサイトへの本登録が完了致しました」の連絡が届きました。
届いたメールの記載されたURLからパスワードの設定をしました。
心不全療養指導士 認定試験学習用eラーニング受講費用支払い(2022.4.4)
心不全療養指導士ホームページ「受験資格」のタグをクリックし、出てきた画面を下にスクロールしていくと「受験者用eラーニング講習、症例報告書、申請書類について」があります。その下の「受験者用eラーニング講習」をクリック。
そこから日本循環器学会会員ポータルサイトに入る際に、本登録の通知メールに記載されている「会員番号」と設定したパスワードが必要になります。
会員ポータルサイトが表示されたらしばらく下にスクロールして「外部サイトへのリンク」下の「心不全療養指導士 認定試験学習用eラーニング」をクリック。
クレジットカードで5000円の支払いを済ませると、「心不全療養指導士 eラーニング」画面が表示され視聴できる状態になりました。
eラーニング視聴開始(2022.4.4~)
約3分から20分ぐらいの50の動画で構成されてました。
ガイドブックに沿った順番・内容になっておりますので、この段階でガイドブックは必須だと思います。
すべての動画を見終えると受講修了証がダウンロードできます。
全動画で9時間弱。
私はメモを取るために、動画を所々止めながら見ていたので、すべての動画を見終えるまでに費やした時間はこの2倍以上はかかりました。
4月14日に受講修了証のダウンロードができました。
症例報告5例の患者選定と患者への指導・介入(2022.4.14~)
eラーニングの学習内容を踏まえ6月1日から7月31日に5例の症例報告の入力を終えなければなりません。
つまりeラーニングの学習内容を生かした指導や介入を少なくとも5名の患者に行い、7月31日までに5例の症例報告を行わなければならないということになります。
私の薬局の場合、循環器疾患を持つ患者さんの利用は少なく、該当する患者さんの来局日などを考えると、eラーニングの学習は出来る限り早く終わらせる必要がありました。
症例報告は、患者さんの病態や日常生活、患者さんの意向等に合わせた指導内容の記載が問われます。
処方箋の内容だけでは患者さんの詳しい病態はわからないため、毎回血圧や採血データを見せていただける方や、心エコー検査の結果を見せてくれた患者さんを選んで指導・介入を行いました。
普段から積極的に採血データ等を見せてもらっていたことが、こういうところで役に立って本当によかったです。
オンライン申請と症例報告入力(2022.6.1~7.31)
受験申請書の記入では、薬剤師資格取得日や学歴、職歴の記載が必要になります。
受験申請書の登録が終えたのが6月17日。
登録を終えるとメールによる案内がきて、症例報告書5例分の登録が出来るようになります。
症例報告書に入力する患者の薬歴を印刷し、その薬歴を参照しながら症例報告の入力を行いました。
5症例登録完了したのが6月28日。
登録を終えると登録済みのメールが入り、提出物の内容・送付期間(8月1日~10日)や受験料振込先・振込期限(8月10日まで)の案内もありました。
オンライン登録後でも7月31日までは、再ログインすることで何度も登録内容(受験申請書や症例報告)を変更することが可能の案内もありました。
私は何回も入力したものを印刷し、紙媒体での内容のチェックを行い修正し、最終的に7月6日に登録したものが提出した書類となりました。
受験審査料振込(2022.7.6)
5症例の登録が終わった後のメールで振込先等の案内があったので、15,000円指定先に振り込みました。
入金確認のメールは9月12日に届きました。
症例ごとに確認者・指導者(所属長・部門長・循環器科の医師など)の承認をもらう(2022.7.6~7.31)
最終オンライン登録したデータのPDFを開き印刷します。
提出用の症例報告書の症例ごとに確認者・指導者の承認(署名は手書き・施設名はゴム印等でも可)が必要になります。
提出物の手書きの訂正は不可なので、確認者・指導者からの指摘による修正は再度オンライン登録をして、新しいPDFデータを印刷して署名押印してもらう必要があります。
7月31日を過ぎるとオンライン登録が出来なくなるため、時間を考えて確認者・指導者に署名押印をお願いする必要があります。
必要書類の提出(2022.8.4)
受験申請書(写真の貼り付け・押印済み)
症例報告書5例(確認者・指導者の署名押印済み)
資格免許証のコピー
eラーニング修了証(ダウンロードしたものを印刷)
受験料(15000円)振込時のご利用明細票のコピー(私はネットバンキングで振込んだため、振込が確認できる画面のスクリーンショットを印刷)
上記を同封し、簡易書留で指定先に送りました。
症例報告書の審査結果の連絡(2022.11.10)
合否の結果を知らせるアクセス先がメールで届きました。
指定されたURLの画面で、ID(メールアドレス)とパスワードを入力しログインすると
「合格(書類審査通過)」
筆記試験の案内(2022.12.18(日)13:00~15:00)
このページが受験票のかわりとなるため、印刷して持参が必要とのこと。
「確認しました」を必ずクリックするよう案内があったため、しっかりクリックしました。
認定試験までの勉強法
2022.1月ぐらいから初版本を一通り読み、3月6日に巻末についてある「知識確認問題」をやってみました。
7割ぐらいの正解率でしたが、正解に偏りがあり、心不全の病態や心不全の原因疾患についての知識がめちゃめちゃ薄いことを認識できました。
2022.3.18に第2版が届いて、さっそく読み始めました。
「あれ、こんなこと書いてあったっけ」と初版本と内容を比べると、結構内容が変わっていることにびっくりしました。
表が差し替えられていたり、新しい項目が増えたり、初版本では太字で書かれているのに第2版ではそうではない、などなど。
このように初版と第2版とを比べて、それぞれのガイドブックに「追加」「削除」「太線消す」「太線追加」などを書き込み、eラーニング学習の予習復習に生かせるように、後で確認できるようにしておきました。
第2版の「知識確認問題」は、しっかり学習してからと思い、eラーニングを終えてからやることにしました。
4月からのeラーニングでは、単元ごとの動画を見る前に、その単元のガイドブックの内容を一読してから動画を見るようにしてました。
ガイドブックに書かれていない内容があれば随時動画を止め、ガイドブックの空いている場所に書き込みました。
eラーニング学習でもあまりイメージが湧かないようなところは、「YouTube」を検索して補習しました。
4月14日にeラーニングを終え、第2版の「知識確認問題」をやってみました。
7割ぐらいの正解率で、初版本と変わりない結果でした。たぶん出題者がひっかけたいところに引っかかった感じですね。
抑えるべきポイントが見えてきた感じがしました。
症例報告書を作成する際も、適宜ガイドブックやeラーニング動画を参考にしました。
7月6日に症例報告書の入力が終わり、11月10日の症例報告の審査結果が出るまでの間は、日々の患者さんに対する管理や指導を行う際に、ときどきガイドブックを参考にした程度で、試験のために勉強時間をとることはありませんでした。
11月10日に症例報告の合格の知らせが来てから、再びガイドブックとeラーニング動画で勉強を始めました。
最初に取り組んだのは「知識確認問題」で間違ったところの復習です。
間違ったところのガイドブックの読み込み、イメージがつかみにくいところは「YouTube」で動画検索して補習しました。
それを終えると全体的な思考整理のために「Dynalist」というアウトライナーアプリを用いて、いままでの大事だなと思ったポイント(情報)を階層化しながら以下のようにまとめました(「ガイドブックの内容」&「前にeラーニング学習でガイドブックに書き留めた内容」)。
個人的には、このまとめたものをプリントアウトして利用しようと考えていたのですが、うまくプリントアウト出来ず残念でした。
eラーニングをまた最初から視聴し、このまとめた資料の階層化が正しいか、または追加の情報はないかのチェックを行いました。
あとは、初版本と第2版のガイドブックの「知識確認問題」を2回ずつ行い、まとめた資料を一通り読み確認して試験に臨みました。
認定試験
認定試験はマークシートで80問
計算問題はなし
「正しいものを1つ選べ」、「正しいものを2つ選べ」、「間違っているものを1つ選べ」、「間違っているものを2つ選べ」、などが混在
初版や第2版ガイドブックの「知識確認問題」と全く同じ問題はなし(だったと思います)
第3回心不全療養指導士筆記試験で個人的に確認できたもの
私自身、9割ぐらいは自信をもって回答できましたので、簡単だったと言いたいところですが、実際どのぐらいの割合が正解出来れば合格なのか示されていないので、何とも言えないですね。
ただこれで落ちたら相当レベルが高いと思います。
試験は、迷う問題は後回しにして、一通りテキストに答えを書き終えた後に、マークシートのマークの塗りつぶしをまとめて行いました。
その後、保留していた問題を解いて、マークを塗りつぶし、マークの塗りつぶしミスがないかを確認。
最後に問題の読み違えがないかどうかを確認して試験を終えました。
試験は15時まででしたが、私は14時30分ごろに退出しました。
余談ですが、マークシートのマークが大きくて、塗るのにめちゃめちゃ時間がかかりました(問題を解いている時間よりも長かったかも)。
マークシート塗りつぶし用の鉛筆があったほうが良いかもしれません。0.5mmのHBシャーペンでは本当にきつかったです。
この消しゴム(MONOzero)は良かったです。マークの塗りつぶしのはみ出しを消すのにほんと重宝しました。
あとは個人的に老眼鏡が必要でした(笑)
合格発表
試験結果に関する連絡(2023.3.1)
合否の結果を知らせるアクセス先がメールで届きました。
指定されたURLの画面で、ID(メールアドレス)とパスワードを入力しログインすると
「合格」
やりましたぁ!!!
認定証とピンバッジを楽しみに待ちたいと思います
最後に~更新認定に向けて
心不全療養指導士認定のための勉強は非常に有意義でした。
特に症例報告をする際の患者さんの病態把握では、普段薬局ではなかなか把握しずらい検査値や病名に関する情報を得る必要があり、正直5例がいっぱいいっぱいでしたが、非常に勉強になりました。
更新時にはまた5例の報告が必要になるので、普段から症例報告がスムーズにできるよう、患者さんに対して積極的に介入していこうと思います。
単位の取得に関しては心不全療養指導士ホームページを参照しながら、既定の単位を取得していこうと思います。